錦織報道に学ぶメディアリテラシー
先日、こんな記事を見つけました。
http://news.tennis365.net/news/today/201905/123690.html
だから何!?
0-15からのブレーク率が現トップ10選手のなかで3位。
たしかに、世界屈指のリターン巧者と言われる錦織のリターンゲームでの強さを表すひとつのデータではあるかもしれません。でも、この情報を必要としている人がいるのかといえばそれは疑問で、ただ「錦織の名前がランキング上位にあったからとりあえず記事にした」感が否めません。
テニスのいろんな記事を見ていると、こういったあらゆるデータを分析したランキングをよく見ますが、「そんなランキング誰が求めとんの?」と思うことがしばしばあります。
恣意的に条件を絞って、特定の選手を持ち上げるために作った情報なのではと思うことも、少なからずあります。
まあ、こういうデータは基本的にATPが公開しているので、そういう目的があるわけではないでしょう。
データを活用するメディア側の問題なんですかね。
「データを分析→A選手がすごい→A選手をほめる」ではなく、「A選手をほめたい→A選手がすごいという分析がほしい→都合のいいデータを探す」という典型的な論理の逆転現象を感じます。
それに関わっていえば、錦織は「マラソンマン」と言われることがあります。
いつぞやのデータで、フルセットでの勝率が異常に高かったのです。(最近もそんなデータを見ました。)
メディアではそれをもとに、錦織は粘り強い、長期戦に強い、しっかり勝ちきる力があるというようなことが言われていました。
が、個人的には、このデータはどちらかと言えば、シード選手と対戦する前の大会序盤で、ランキング上では錦織より下位に位置する選手を相手に第1セットを落としてフルセットになる率が高いということを示すデータとしての側面のほうが重要ではと思っていました。
たしかに錦織は長くトップ10に君臨し、ランキングトップの選手をも脅かす、新世代の代表的な存在であり(今ではさらに下の世代が現れ中堅もしくは少し上ぐらいの扱いですが)、ビッグ4相手にも勝利することが度々ありました。そんなときはもちろん激戦となり、フルセットまでもつれた上でトップ選手を撃破する、といったことも多かったため、もちろん錦織の勝負強さを示すデータでもあります。
でも、個人的には、大会序盤でのフルセット率の高さが気になっており、データの都合のいい面だけを取り上げているようにしか見えませんでした。
先日の2019年全豪オープンで、カルロビッチやカレーニョブスタなど相手に初戦からフルセット(4大大会なので5セット)が続き、準々決勝でのジョコビッチ戦で疲労による負傷を理由に途中棄権となりました。(このとき私はインフルエンザにかかり、仕事を休んでいたのでほとんどすべての試合をリアルタイムで観ていました。笑)
ここまできて、ようやくメディアも「大会序盤でのフルセットの多さ」を取り上げ始めました。あたかも、「今回の全豪オープンのみにおける敗因」であるかのように。
あなたたちが今まで報じながらも目を向けなかったデータの裏面にいつもその問題はあったんですよ!!!
こんな感じで、両面性を持つデータの、都合の悪い側面には目をつぶり、都合のいい側面だけを大々的に取り上げる、というのもよく目にする気がします。
論理にもとづき、広い視野で物事を分析する。メディアからの情報を一方的に鵜呑みにするのではなく、批判的思考をもとに自分の考えをしっかりと持つことが大事ですね。
とりあえず、錦織には全仏がんばってほしいですね。